ローカルお弁当屋さんの決算発表会

当社はお米の卸売り業が本業だ。玄米の状態でお米の産地から仕入れ、自社工場で精米。それを自社トラックに積み込み、地域のレストランや食堂・病院に配送していく。

その大口先で、地域でローカルのお弁当屋さんを7件経営している会社の決算説明会に参加した時の話を書いていきたい。

 

「飲食業は大変だ」「原価率と人件費の高騰で、利益なんて残らない」そういう話をテレビや新聞で見聞きしていたので、果たして大丈夫なのか?と思いながら参加した。それを踏まえて私の予想は、「利益の額は明かされず、売上の推移や施策中心の、数字があまり出てこない発表会になるだろうな」というものだった。

 

予想は良い意味で覆された。まずは、コロナ過の3年間の数字が発表された。この会社の発表会で利益額が開示されたのは、たぶん初めてだ。初年度700万の赤字。2年目、1,300万の赤字。3年目、300万の黒字。それらの数字を含めて一年前にどのような施策を考え実行してきたのかが提示された。

 

大目標は一つだけ。原価率の改善だ。原価率がコロナ3年目では、58%。通常飲食店の原価率は30%が目安と言われているが、かなりかけ離れている。このポイントを一年間で5ポイント下げ、53%にする事が目標だったそうだ。原価率を改善しつつも売上は現状をキープする目標。そのための施策が以下になる。

 

①接客品質の向上をはじめとしたQSCの向上

②売上商品の値上げ

③法人向け仕出し弁当の販路開拓

 

①接客品質の向上は、主にお客様の購入体験の満足度を上げ、リピート率を上げるための施策だ。接客品質向上のための研修を一年を通して行い、接客品質の向上をはかった。①については、直接原価率に貢献する施策ではない。原価率のカットの本丸は②の売上商品の値上げだ。原価率の改善は原価、つまり原材料の費用を抑えるか、商品の値段を上げるかしかない。

 

②売上商品の値上げ 魚の天ぷらの単価は一年前97円だった。現在は147円らしい。ほぼ50%の値上げを行っている。商品単価を上げれば、来店意向や購買意欲が弱くなるが、そこで①の施策が生きてくるという仕組みだ。

 

③法人向け仕出し弁当 これについては、新しいターゲット層にアプローチし、「そもそも高くかってくれる層向けに商品を提供しましょう」という施策だ。観光地でもあるので、そこで会社ぐるみの合宿や旅行に伴う高級弁当の提供によって単価の高い仕事を取ってくる。これも直接原価率に関わってくる施策といえる。

 

上記のような施策の結果

原価率は58から54に改善。売上は微増という結果になっている。そもそもこのお弁当屋さんの売上は7億前後あり、原価率を4ポイント改善する事で、300万の黒字から3,500万の黒字という結果につながったとの事だ。

 

正直驚いた。特に、シンプルに②のハードルが高い。ラーメン屋さんの廃業がたびたびニュースなっているが、「1,000円の壁」と言われるラーメンというものに対するお客様のイメージ価格があり、それを超えると一気に来店意向が落ちる事だ。そのため、値上げができないと高くなった人件費などをカバーできなくなり、廃業に陥るというロジックだ。

 

弁当屋さんだと、私は「500円の壁」というものがあると思っている。もちろん地域差はある。私たちの地域ではという話だ。今後お店に行って検証してみたいと思っている。